本 2008

「令嬢クリスティナ」

エリアーデの耽美でエロティックな女吸血鬼の物語。
「妖精たちの夜」と較べると驚くほど読みやすいです。
ルーマニアの貴族の館に滞在する若く美しい画家が、女吸血鬼に求愛されるという・・その館には女主人とその二人の娘がおり、一人の娘は年頃で画家が恋する相手、もう一人はまだ幼いけれど大変な美少女という、まあ本当に妄想に満ち満ちた内容と言ってもよさそうなほど。
でも描写は大変美しいです。(★★★)

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「スペイン ゴヤへの旅」

「宮廷画家ゴヤは見た」を見たもので、ゴヤ本をちょっと読みたくなって図書館で見つけたのがこの本。
ミロス・フォアマンが組み立てた筋立てのインスピレーションがどの作品からきたものなのかがわかるような思いで、楽しく読めました。
しかし、苦笑が止まらないほどの下ネタ満載で、スペインというお国柄といい王家の人々といいゴヤ本人といい・・すごいすごいカラフルなネタばかりです(笑)
でもちゃんと歴史的な重要部分も押さえてある。
下ネタ嫌いじゃないですから、というより面白くてとても読みやすかったですから。(★★★★)

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読書の覚書'08

ニードフル・シングス(上・下) (文春文庫) スティーヴン キング 08/07/02
エド・ハリス目当てで映画を見たことがありますが・・これは原作の方が遥かに深くてグロくて恐ろしいですね。「エクソシスト」のマックス・フォン・シドーにゴーントをやらせているのは凄いですが、原作の登場人物の多さも破壊の規模も比較にならないほどです。人間を読む、そこがとてつもなく面白い!(★★★★★)

スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー) スティーヴン キング 08/06/04
映画「ミスト」の原作「霧」が収録されています。なるほど霧の中のモンスター描写は本の方が私的にはまだ受け入れられるかも知れない・・でも映画は人間描写においてよく健闘していると思いました。(★★★)

リスタデール卿の謎 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) アガサ クリスティー 08/05/21
名物探偵が誰も出てこない短編集。サスペンスで味付けされた小粋なラブストーリーといった方がいいかな?主人公の名前がジェームズ・ボンドという(偶然でしょうが)「ラジャのエメラルド」が面白かったです。「イーストウッド君の冒険」とかタイトルが面白い(笑)(★★★)

七つの時計 (クリスティー文庫) アガサ・クリスティー 08/05/05
「チムニーズ館の秘密」以来の闊達なバンドル、趣のあるケイタラム卿、折り目正しいトレッドウェル。今回は渋い魅力をたっぷり放ってくれるバトル警視が素敵!展開も鮮やかです。面白い。(★★★★)

運命の裏木戸 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) アガサ クリスティー 08/04/22
トミーとタペンスは「おしどり探偵」以来だったので、いきなり75歳ぐらいになっていた二人に最初戸惑いました。でもユーモアのあるトミーの愛妻ぶりもタペンスの好奇心も相変わらず。とはいえクリスティー83歳の時の作品だそうで、話の運びや結末の切れ味はイマイチという気もしました。 (★★★)

黄色いアイリス (ハヤカワ文庫 AC) アガサ・クリスティー 08/04/07
ポアロ5編、P.パイン2編、マープル1編を含む短編集。ポアロの「バグダッドの大櫃の謎」と「二度目のゴング」は既読感ありあり。同じかと思えば出だしのニュアンスが若干違うので、そっくりな短編と気づきました。どちらか(「二度目~」は間違いなく)がたたき台になったのですね。表題作も未読の「忘られぬ死」の原型だそうで、読み比べが楽しみ。P.パインの「ポリェンサ海岸の事件」が面白かったです。

検察側の証人 (クリスティ文庫) アガサ・クリスティー 08/03/21
タイロン・パワー、マレーネ・ディートリヒの映画を先に見ているのでオチはわかっていたのですが、それでもさすがの大どんでん返しぶり。原作戯曲を読むと、いかにビリー・ワイルダーが魅力的に味付けしたかがまたよくわかります。

愛の探偵たち (クリスティ文庫) アガサ・クリスティー 08/03/12
このタイトルがどうもこそばゆいのですが、原題も「The Love Detectives」だし・・初読のクィン氏についてはこれだけではまだよくわかりません。ポアロの短編二編が面白かったのと「マウストラップ」の原作が興味深かったです。戯曲より細かくいろいろなことがわかるのと設定のちょっとした違いとか。(★★★)

死人の鏡 (クリスティ文庫) アガサ・クリスティー 08/02/29
ポアロもの短編集。というか中編といっていい長さの作品五作。やっぱりポアロが好きです。犯罪の匂いを嗅ぎつけ、心を痛めながらもその場に居合わせて、真実を明かしながら心遣いは忘れない、「私にそれ以上何が出来ます?」という風情漂うのがよいのですね。彼が犯罪者に対して抱くのは怒りではなく悲しみなのです。

火曜クラブ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) アガサ クリスティー 08/02/18
ミス・マープルがその鋭い人間観察眼で「火曜クラブ」のメンバーが順繰りに提示する難事件を解き明かしていく短編集。長編のネタ帳のような既視感のある作品も幾つかあり、謎解きもしやすい。設定をひねった最後の二編が面白かったです。

蒼ざめた馬 (クリスティー文庫) アガサ・クリスティー 08/02/03
事件の輪郭がつかめるまでかなり読み進むことになります。何が伏線となっているのかは読みながらすぐわかるのですが、それが何の伏線となるのかがなかなかわからない。今回の主人公は、オックスフォード出の若き学者マーク・イースターブルック。オリヴァ夫人もまた登場です。(★★★)


おしどり探偵 (クリスティー文庫) アガサ・クリスティー 08/01/15
タイトルどおりトミーとタペンスのペレズフォード夫妻が素人探偵業に乗り出す短編集。探偵小説オタクな二人がさまざまな名探偵を気取って事件を解決しようとするのですが、コメディとパロディの匂いがしてとても軽妙なタッチです。私自身オリジナル未読のものも多く、楽しさ減少が残念でしたが、「婦人失踪事件」が面白かったかな、ハハ。短編ゆえ謎解きが易しいのも数編ありました。(★★★)

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「ハリー・ポッターと死の秘宝」

最終巻だけあって最初からひきこまれました。
ハリーがヴォルデモートと対決することはわかっているのだから、そこへ行き着くまでややもどかしく感じる時もありましたが、最後まで読んだらその遅々とした運びについてもまあ納得・・できたかな?(笑)
最初から一貫してハリーの心の大きな部分を占めた重要なホグワーツの人物二人の長く隠された思惑が、一番強く心に残りました。
やっぱりこの物語は大人パートが素敵よ、映画と同じく。
そして次々と失われていく愛すべきキャラクターの命の輝きが、一つ一つ蝋燭の火の最後の明るさのように灯っては消えていくのが悲しくもあり、美しくもあり。
ハリーが決して気位の高い特殊な少年ではないというところも、最後まできちんと描かれていました。
凡庸であることの幸せみたいなものに、読後ほんわりと包まれました。(★★★★)

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「嫌われ松子の一生」

小説読み終わりました。
中島哲也監督の映画表現の面白さは抜群だと思いますが、う~ん、小説には小説ならではの良さがあるなぁ。
まずはヒロイン川尻松子。
不器用という感じは全くせず、いつも一生懸命でその気になれば何でもこなし、芯が強いけど別に変わり者でも何でもない。
映画だと、いつものめりこみすぎるから男に捨てられるのかと思いましたが、原作松子は自分から身を引いたこともあったし、男に対して毅然とした部分もありました。
それに龍洋一は絶対原作の方が人間造型がしっかりしてる。
"人でなし"が人になる物語として龍は存在しているわけで、悩んで苦しんで自分も人も痛めつけた末に悟った彼の真実は、ある意味松子以上に魅力的な佇まいを感じさせました。
でも松子と父親と病弱の妹・久美のことは、映画は実にうまくその機微を汲み取ったと思います。(★★★★)

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「妖精たちの夜」

第二次世界大戦をはさんだ12年間のルーマニア人を描いた歴史絵巻とも言えそうな大作。
主人公シュテファンは、妻がいながら別な女性を愛するようになり、二人共を同様に誠実に愛そうとするし、歴史の干渉から逃れ、時間から出て生きることを望む、なかなか理解できない考えにとりつかれた男性なので、ちょっとついていけないと最初思っていたのですが、主人公は望まぬともルーマニアの戦乱の歴史に巻き込まれてから急激に面白くなり、夢中で読みました。
特に二巻が面白いです。
脇役一人一人がとても個性的で、彼らの物語も大変充実しています。
私が一番好きなのは、シュテファンの親友で、若いのにはげてて結核の哲学教師ビリシュ。
真夜中に秘密の部屋に招待して、自分の描いた絵を見せると言いながらなんのかんのと渋るシュテファンに、疲れてうんざりしているビリシュのことを読んだ時から、彼ならついていけると思ったのですが、なんといってもその末路の悲しくも美しいこと。
「時間」から退場していく主要人物それぞれに劇的なドラマがありますが、ビリシュは圧巻です。
それにしても、私はルーマニアのことを知らなさすぎた。
第二次世界大戦を、日本にアメリカ、ドイツ、ロシア、イタリア、フランスやイギリスなど西欧の目線でしかとらえたことがなく、東欧、それもルーマニアがどんなに国内外で翻弄されたかをまるで知りませんでした。
目からウロコ、ちょっと衝撃的でした。
巻末に訳者の解説とエリアーデの年表が載っているのも親切です。
いい本を読みました。(★★★★★)

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「マイトレイ」

ルーマニアの宗教学者でもあるミルチャ・エリアーデがインドに滞在していた頃の自伝的恋愛小説。
主人公はフランス人の26歳の土木技術者となっているし、細かい設定が少しだけ変えてあるようですが、ヒロインである16歳の才能豊かなマイトレイは実在の人物。
官能的で美しい悲恋の物語で、ヨーロッパとインドの風習制度ならわし、あらゆる違いが引き裂いた恋の痛みがマイトレイの妹チャブーに最も悲しい形でふりかかり、衝撃的でした。
傷心を乗り越えて次のステップに進むために必要な心の整理としての小説という色合いが強いです。(★★★★)

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「未完の肖像」

クリスティーがメアリー・ウェストマコット名義で出した恋愛小説。
恋愛小説には普段あまり食指が動かないのだけれど、これはヒロインやその母、祖母の人物描写の繊細さが際立っており、そのリアリティから考えても身近にモデルとなった人物がいたと考えられます。
ヒロイン像はクリスティー自身ではないかと思われているというのも納得の緻密さ。
ある面、彼女のミステリーより深い人物描写です。 (★★★★)

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「鹿鳴館」

よく舞台にかけられている人気戯曲という印象で、夜会服に身を包んだ貴婦人役の女優の写真を宣伝ポスターで何度か見かけた記憶がありますが、舞台で見たこともありませんでした。
なるほど~華麗ですし悲劇ですし、それまで頑なに和服姿を通してきた貴婦人が鹿鳴館デビューで蝶のように美しく変身することや、大量に流れ込んできた西洋文化に戸惑う日本人の世相を背景に、交錯する男女と親子の悲劇的な関係をサスペンスタッチで盛り上げたりと、舞台映えする内容に大納得。
他に収録された「只ほど高いものはない」「夜の向日葵」「朝の躑躅(つつじ)」と、どれも女の怖さやある種の魔性ぶりにゾゾ~ッとさせられるようなものばかり。
読むのは面白かったですが、芝居で見ると後味あんまりよくないかも・・どれもヒロイン像は私の好みではありません、正直言って。(★★★)

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「マン島の黄金」

表題作は、マン島への観光客誘致のために書かれた懸賞推理小説。
この島について全然知らないので、推理は全く出来ませんでしたが、読後解説による種明かしに目を通すだけでも面白かったです。
既読の二編も含まれていますが、統一性はなくとも一つ一つ別の味わいがあって、小洒落た作品集だと思いました。(★★★★)

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